凶漢−デスペラード

ジュリはそう言おうとしたが、言葉に出なかった。

「店の名前、アタシが考えて上げる。」

「好きにしな。」

「じゃあね……エンジェルキス…どお?」

「早いな、まるで前々から考えてたみたいじゃないか。」

「可愛い名前でしょ。」

「まあな、でも何処にでもありそうな名前だな。」

「そんな事無いよ。」

口を尖らせて否定するジュリを見て、竜治は自分も少しだけジュリを好きになっていた。

「友達に電話して、一緒に働いてもいいか聞いてみるね。」

竜治の返事を聞かないうちに、ジュリはケータイの番号を押していた。

彼女が何人かに話してる間、竜治はジュリ達を使うのも一つの売りになるかも知れない…そう考えた。

秘密の援交倶楽部…前から居る女達は従来通りのコースで受け、ジュリ達はスペシャルコースの受け付けにする。
VIP会員のみ、それも口の堅い上客だけ。
社会的地位の高い人間程、自分の身を守りたいから、未成年の少女と遊んだなどという事を自分からは口にしない筈だ。
前の店の顧客名簿から、上原に上客をピックアップさせよう…

竜治も早速行動に移った。

上原に電話をした。
呼び出し音十回目でやっと出た。

「顧客名簿の件なんだが…」

(あっ、すいません、メモリースティックの予備が無くて、まだ落としてないんですが…)

そんなもん一旦自分で立て替えて買っておけ!
心の中で怒鳴っていた。

やはり、使えない男だ……

「その事よりも、先にやって貰いたい事があるんだ。」

「はぁ…」

電話越しながらも、上原の警戒する気持ちが伝わって来た。

「利用頻度の高かった客で、身元の確実な人間をピックアップしておいてくれ。」

(判りました。)

「それから、俺の知り合いの女の子が働く事になるから。後で顔見せがてら道玄坂のロイホに顔を出してくれないか。」

(判りました。)

竜治が電話を終えると、

「ミイちゃんと、ハルカちゃんの二人がOKだって。で、丁度渋谷に来てて、センター街のとこなんだって。呼んじゃったけど構わないよね?」

「呼んじまったらダメとは言えないだろう。」

「ゴメン…」

「謝んなくてもいいよ。どうせ会わなきゃならなかったんだ。」