ジュリは、竜治の両腕が背中に回ると、自分から身体を預けた。
見上げたほんの僅かな距離に、竜治の精悍な顔がある。
眼がじっと自分を見つめている。
ほんの一瞬の間を置いて、竜治の顔が被さって来た。
ジュリは、受け入れた。

長いキスだった。

「お前、以外と華奢なんだな…」

「きゃしゃ?」

「か細いとか、ちっちゃいて意味だ……」

「可愛いらしいって言ってくれた方がうれしいかも……」

「少しばかり意味が違うぜ。お前、普段あんまり食ってねえだろう?」

「どうかな…それよか、リュウちゃん…あそこが当たってるよ…おっきくなってる…」

竜治はそういう事を恥ずかしそうに口にするジュリを急に愛おしいと感じた。

「お前が俺を誘惑したんだぞ…」

「責任、取って欲しい?」

「…今は…我慢しとくよ。」

「なんで?」

「すぐに出掛けなくちゃいけないんだ。」

「何時も忙しいんだ…今夜もエニグマに行くの?」

「いや、当分は行く事も無いだろうな。新しい仕事の段取りがいろいろとあるんだ。さあ、俺はもう出るぞ。」

竜治はそう言ってシャワー室を出た。
ジュリは自分の身体を洗い始めていた。

妙な小娘だ……

竜治は無意識にそんな独り言を口にしていた。
買ったばかりのスーツに着替えた。
新品のオープンシャツの衿が首筋を軽く刺激する。
それは、心無しか竜治の気分を高揚させた。

のし上がれ……か……

澤村の言葉を心の中で真似てみた。

身支度を終えた竜治は、

「ジュリ、飯食いに行かねえか?」

と、シャワー室に声を掛けた。

「行く、行く。待っててすぐ出るから。」

ジュリの浮かれたような返事が返って来た。

何だかんだジュリの支度が出来たのは、それから30分位してからだった。

「ねえ、何処で食べるの?」

ジュリの浮かれ方は、小さな子供がはしゃぐのに似ていた。

「ロイホにでも行くか…」

「うん。」

外に出ると、冬の気配を感じさせる夜気が二人のほてった身体を鎮めるかのように冷ましてくれた。

「いくらなんでもその格好じゃ寒いだろ?」

ジュリは相変わらず肌を露出した格好だ。

こいつに何か服でも買ってやるか……