凶漢−デスペラード

「ウギャァーッ!」

河田が狂ったように久美子の身体を蹴っていた。

漸く自分の股間から久美子の顔を引き離すと、その口許は夥しい量の血で真っ赤に染まっていた。

河田はその場にうずくまり、両手で股間を押さえてる。

両手の間から血が噴水のように出ている。

あっという間に床が血の海になった。

男達が慌ててシャツやらタオルやらで河田の出血を止めようとした。

のたうち回る河田の姿を久美子は茫然としながら見ていた。

ビデオを撮っていた男が久美子に殴り掛かり、何度も蹴った。

久美子の悲鳴と、河田のうめき声が部屋の中でこだました。

地獄絵巻そのものであった。

一人の若い男は、吐き気を催し部屋の隅でゲェゲェ吐いている。

別な男は、いつの間にかシャブでも射ったのか、完全にラリってしまい、この光景をみながら笑っている。

今、この部屋に居る人間の中で、誰一人として人間としての理性を持つ者はいない。

狂っていた。

狂った方がマシだった。

狂い切れず正気に戻った者は、恐怖を感じこの場を逃げ出していた。

河田は激痛に耐えながら、久美子を殴り続けてる男に止めろと言った。

「止せ……殺すな……まだ殺すんじゃねえ…それより…ビデオ……ビデオ、ちゃんと撮ったか?そいつをすぐに送って来い…ついでに、薬と…包帯……早くしろ!」

それだけ言うと、河田はぐったりとした。

部屋の反対側では、久美子がピクリともせず横たわっている。

まだ息はある。

微かだが、男達に汚された久美子の胸が上下している。

足元に転がっている玩具が、血と体液の海の中で鈍い音をたてながら蠢いていた。