凶漢−デスペラード

「久美子さん…そんなに怯えないで下さいよ。私はあいつらみたいに乱暴はしませんから…」

家具も何も無い殺風景な部屋に、撮影用のライトだけが照らされている。

その灯りに映し出された河田の顔は、この世のものとは思えなかった。

悍まし気に笑いながら、河田はゆっくりとした動作で自分のネクタイを解き、それで久美子の手を縛った。

「神崎とは毎晩上手くやってるかい?久美子さん……俺、昔からあんたの事、好きだったんだ…ピッタリのタイプだったんだ……判るかい?今の俺の気持ち……憧れてたあんたが、こうして俺の足元で震えてる……堪らねえなぁ……」

久美子の服が一枚一枚、時間を掛けて脱がされて行く。

下着だけにされ、久美子に馬乗りになった。

「いや、止めて!私の身体に少しでも触れたら……」

「触れたら、どうする?舌でも噛み切りますか?それはちょっと困るな…悪いがこうさせて貰いますよ……」

そう言って、河田は自分のポケットからハンカチを出し、久美子の口をこじ開けて突っ込んだ。

そして、河田はおもむろに反対のポケットから注射器と小さなスポイトに似た容器を取り出した。

「大丈夫…大丈夫だから…もうすぐ天国に行かせて上げますよ……極上の天国へね……」

久美子の両肩は、河田の膝で押さえ付けられていた。

注射器の中に容器の液体が吸い上げられた。

最後の力を振り絞るかのように久美子は身体をよじろうとした。

「優しくしてんだから大人しくしろっ!」

怒号と同時に、河田の平手打ちが飛んだ。

押さえられた左腕に刺すような痛みが走った。

「ほうら、大人しくして…もうすぐだよ…もうすぐだからね……」

久美子は、身体中の血管がすうっと冷えて行くように感じた。

注射をされて、ものの十秒とせずに、全身の力が抜けて行った。

「やっぱ、混ぜもん無しは効き目が早いぜ…」

身体が浮き上がるような感覚の後、久美子は全身が驚く程敏感になっていた。

河田が下着を脱がそうとして、肌に指が触れると、ビクッと痙攣した。



数分後、部屋の中は河田の荒い息と、久美子のくぐもった鳴咽で充満した。