「毎日つまんなそーな顔ばっかしてたのに、今じゃ学校来るの楽しいだろ?
だって会えるもんな、彼女に。まぁ相手が相手だけに結構厄介だけど。
でも会えんじゃん。学校来れば。
それって生きる原動力にならねぇ?」

「生きる原動力は言いすぎだろ?」

「んなことねぇよ。
『好き』の力は偉大だぜ?」

「言ってることがキモイ。」

「はぁー?
ま、せいぜい頑張れよー。
適当に応援するし、適当に力になるから。」

「…適当すぎるな。でも…。」

「?」

「サンキュー。
お前のおかげで助かった、色々と。」

「…おう。」



確かに、巧のおかげで助かっている部分は多々ある。
彼女への気持ちも…こいつに言われていなければ気付かなかったかもしれない。



「次、数学だなー奏。」

「声でかいっつの。お前、予習してきたのかよ?」

「してない。だからノート貸して♪」

「バーカ。誰が貸すか。」

「奏、冷たすぎるー!!」


でも俺は忘れてたんだ。
自分が『高橋奏』という縛りの中にいる存在だってことを。
その名前が、先生を傷つけるってことを。