「鍵は、て聞いたら、渡したって言って、何だか思い詰めていたぞと廉が言った途端走り出したわけ」
「………」
あたしは、別に思い詰めてなんかいなかったんですけど?
………マリモ、もう絶対名前覚えてなんかやらないわ。
取り敢えず、話は分かったから、今にも押し潰してくれる勢いの蒼真をどうにかしなければ。
「蒼真」
「ん」
「マリモが勘違いしただけよ。あたしはただ静かな場所に行きたかっただけだから」
思い詰めてなんかいないよ。
そう言うと、蒼真は腕の力を僅かに緩めてくれた。額と額を合わせ、距離が縮まる。
「本当か……?」
「うん」
「そうか………」
安心し、目を瞑る蒼真。
蒼真でも慌てたりするんだなと思った。