そうだ俺。


ヨウ達に連れられてゲーセンに来た後、ココロに傷の手当してもらってたんだっけ。


家に帰ってしっかり手当てできるように簡単な手当てしてくれてるんだっけ。

ゲーセンの迷惑も顧みず、俺、地べたに座ってエアホッケー台に寄り掛かってるんだっけ。


いっけねぇ。完全、俺のワールドに入ってたよ。


何も答えない俺に困った表情を作っているココロ、俺は詫びて「もうないよ」と返事を返した。


「ありがと。後は家に帰って自分でやるから」

「あ、あああの、絆創膏なら買ってきてるんです…、良ければどうぞ」


そっと差し出してきた絆創膏の入った小さな箱。

うん、これはやっぱり近くのコンビニで買ったな。

コンビニ名の入ったシールがベッタリと貼ってある。


クダラナイことを思いながら、俺は受け取ることにした。遠慮しても良かったんだけど、ココロの気持ちを拒否するようで悪い気がしたから。

俺が受け取るとココロが嬉しそうにはにかんできた。

自然と俺も笑えてココロに再度礼を言った。


ココロは照れたように「こんなの何でもないです」


汚れたティッシュをビニール袋に放り込んで片付けを始めた。



結構な量の汚れたティッシュがビニール袋に放り込まれている。それだけ俺、怪我したって事だよな。 


絆創膏の箱に目を落とす。

明日の俺、絆創膏男にでもなってそうだな……。


必要最低限のところに使おう、絆創膏。なるべく顔には使わないようにしよう。

絆創膏の箱に貼りついているシールを親指で触っていると、ココロと入れ替わりに誰かが隣に胡坐掻いて座ってきた。誰が座ってきたか見なくても分かる。

つくづくゲーセン側にとって迷惑極まりない行為をしているよな。

ジベタリアンっていうんだっけな? こういう何処でも構わず地べたに座る奴等のこと。箱を見つめながら、また一つどうでもいいことをボンヤリ考えた。


そんな俺に声を掛けてくるのは、隣に座っている舎兄。


「気分、どうだ」

「最高。さっきは取り乱して。ごめん……来てくれたっつーのにさ。ダサいとこ見せた。取り乱しちまった」

「気にしてねぇよ。それに互い様だ。テメェもダサいけど、俺も十分ダサい」


「なんでヨウがダサいんだよ」


思わず苦笑い。

気を遣ってくれるのは嬉しいけど、やっぱ俺、ダサいよな。日賀野にあそこまでヤラれちまうなんて。

喧嘩なんてレベルの高いものじゃないぜ、俺のヤラレ方。


ホントただのフルボッコ。


ネズミが果敢にも百獣の王ライオンに勝負を挑んだってカンジ。


でも俺がここまでボッコボコにヤラれたのは、相手が日賀野だったからってのもあると思う。

喧嘩なんて殆どしたことねぇけどさ、日賀野の強さは平凡少年にもよく伝わってきた。


なんっつーか、雰囲気がまず違うんだよな。拳とか蹴りとかメッチャ痛かったし。ヨウと肩を並べる不良だってのも納得いく。


ああ、思い出すとヘコむぜ。

ケッチョンケッチョンに負けたあの日賀野との喧嘩、いや一方的フルボッコ。