車通りの少ない道路に差し掛かる。


人の姿も疎らに見る程度で、此処一帯の通りの人気の無さを思い知らされる。

バイク音が響き渡る中、道路を突き進んで行くとヒトリの歩行人と擦れ違った。

弾かれたようにヨウが後ろを振り向けば、歩行人も足を止めて此方を見ている。既に姿形が小さくなっているが表情が窺える。




皮肉った笑みを浮かべている、日賀野大和の表情が。




ヨウが何かを思う前にシズがバイクを停めた。例の自販機の前に到着したようだ。

三台並ぶ自販機うちの一つに部活帰りであろう女子高生の集団が群がっている。


「酷い怪我」「喧嘩かな」「救急車呼ぶべきかな」


聞こえてくる声に、ヨウは誰よりも早くバイクから降りて女子高生の集団を掻き分けて行った。


女子高生の黄色い悲鳴が聞こえたが、今のヨウには気にする余裕がない。

群がっている女子高生達を押し退け、ヨウは自販機の前に立った。

掻き分けた先に待っていたのは、ボロ雑巾のように怪我を負い自販機に凭れ掛かっている舎弟だった。



「ケイ……おいッ、ケイ!」



片膝を突いてケイの両肩を掴み、怪我に響かないよう揺すった。

気を失っているのか微動だにしない。


「ケイ!」


ヨウは何度も、そして必死にケイに呼び掛ける。


「あの人、大丈夫かな。やばいんじゃ」


様子を見守っている女子高生達に、後からやって来たシズとワタルが見世物じゃないからと此処から去るよう催促した。


「此処から先は男の子の領域だから、ごめんねんころりん」

「ウザイのは気にしなくてイイ……悪いが、此処から去ってくれないか? あれは自分達の仲間だから」


「ちょ、シズちゃーん! ウザイって?!」


非難の声を無視してシズは女子高生達に去るよう頼み込んだ。

女子高生達は心配や同情の眼を向けながら去って行く。どうやら此方の気持ちを汲んでくれたようだ。


その間もヨウはケイを揺すって名を呼んだ。

擦り傷が、垂れている血が、紫色に変色している痣が顔や身体にデカデカと存在している。それが痛々しい。


間に合わなかった自分への憤りを感じながら、ヨウがケイを呼び続けると漸く反応を見せる。


声を張って名前を呼べば、薄っすらと目を開けた。


何度か瞬きをして呻き声を上げながらヨウを見てくる。


焦点の合っていない視線にヨウは軽く頬を叩いた。


すると朦朧としていた意識がハッキリしてきたのか、ケイはしきりに瞬きしながら状況を確認し始める。