自分達不良の間では“舎弟”は自分の後継者とか背中を預けるとか、そんなことを言われているが実際そんな能書きなんて気にしたことも無かった。



こいつは面白い、だから今日から舎弟にしてみた。

それだけだ。ケイとの関係は舎兄弟、というよりただのダチ関係。肩書きだけの舎兄弟関係だった。



そんなケイが、自分の後を追いかけて来てくれたことがあった。

ハジメと弥生のピンチだと知ってナリ振り構わず飛び出した自分を、チャリに跨って追いかけて来てくれた。





“舎弟は舎兄の後を追うもんだろ。違うか?”





言葉が脳裏を掠る。

ヨウは掌が白くなるまで携帯を握り締めた。



ケイのピンチに自分は間に合うのだろうか、いや、


「頼む。間に合ってくれ……ッ、シズ! もっと飛ばせねぇのか!」


「……警察沙汰にさせるつもりか」


背中を小突いてスピードを出すよう催促すれば、シズが欠伸を噛み締めながら肩を竦めた。

今、ヨウはシズと共に利二の言う自販機に向かっていた。



古本屋の近くの人通りの少ない自販機にケイとヤマトがいる。

その情報を頼りにバイクで向かっているのだが、気持ちが先走っているせいか五分ほどで着く場所がやけに遠く思える。


「モトや響子を連れて来なくて良かったのか? ヨウ」

「大人数で行ってどうこうなる相手じゃねえ。五木の話じゃ、ヤマトの単独行動みてぇだしな。俺とお前の二人で十分だ」



「……いや、三人だな」



チラッと横を一瞥するシズに、ヨウも右横に視線を向けた。片手を軽く上げてくるのはワタルだった。


「ワタル……あいつ、いつの間に」

「モトか響子かココロが連絡を入れたんだろう。ヨウ、お前、自分と一緒に警察沙汰になる覚悟はあるか?」


シズの問いにヨウは愚問だとばかりに背中を小突いた。

軽く吐息をついてシズは速度を上げる。


吹き付ける風の強さに、ヨウはやや目を細めてしまった。