「ヨウ、これってさ。話すだけ無駄な話かもな。俺等、結局は舎兄弟のまんまなんだから。これが今の俺等なんじゃないか?」



思わず漏れる笑声と共に、俺は自分の考えを口にする。

すると向こうも力なく一笑を零す。


「それもそうだ。ちと浅倉達の心情に手前に重ねたみてぇだな俺等。あーあーあ゛ー……どーしたって今が変わるわけじゃねえのにな。馬鹿みてぇだ」


ヨウはソーダアイスを完食すると、棒を銜えたまま移動。俺の隣、つまりはベッドに腰掛けてくる。


浮き沈みするベッドはギシギシと軽く悲鳴を上げた。


組んだ足に肘を置いて頬杖つくヨウは、


「これが今の俺等だよな」


俺に確認の意味を込めて問い掛けてくる。首を縦に振った。


「これが俺達の未来で今だ。こうなったからにはとことんやれるところまで……だろ、兄貴?」


したり顔を作る俺に、ヨウは軽くふき出す。

「ははっ、分かっているじゃねえか。ブラザー」

結論、あーだこーだウダウダウダウダ考えても一緒。

だから、今の現実で俺等は精一杯頑張っていこう。

別の未来があったとしても、それは別の俺等が奔走していただろう。


今、俺達が集中しないといけないのは、目前の現実だよ現実。

こっちはこっちで色んな問題ある。頑張っていきまっしょい心でいかないと、なあ?


「『エリア戦争』に勝たないとな。これが俺等にとって巻き返しのチャンスにもなるから」


「ああ。知名度を上げるつもりはねぇけど、向こうをビビらすくれぇのことはしねぇとな。振り返ってみれば……こっちは散々ヤられている。何事も攻めだな攻め。『攻撃は最大の防御』ってヤツだ」


はは、ヨウの口から『攻撃は最大の防御』が出るなんてな。

不良のクセに難しい言葉知っているジャン!




「ケイ。テメェも攻め込んでいかねぇとココロのこと、ゲットできねぇぞ?」




にやっ。

意地の悪い笑みを向けてくるイケメン舎兄に俺は唖然。

直後、盛大に硬直して赤面。


「ななな何言っているんだよ!」


溶け始めているソーダを全部口に押し込んで、俺はシャリシャリごっくん。


まんまアイスを丸呑みした。

アイタタタッ、冷たさのあまり頭がっ、ついでに口内と食道が凍死しそうっ! つめたっ!


頭の痛みと冷たさと動揺で身悶えしている俺に、「認めりゃいいのにな」ヨウがおどけ口調で茶化してくる。

ああくそっ、こういう恋愛系話に対して免疫がないんだよな俺。

顔が熱いのなんのってっ、勘弁してくれよ!


反応をすこぶる面白がってくれる性悪の舎兄は、にやにやしながら俺の顔を覗き込んでくる。



「ココロのことが好きなんだろ?」



分かりきった質問にしかめっ面を作ってしまう。


素直じゃない天邪鬼はこう返事した。


「嫌いではない」と。



「そうじゃねえだろう」



ヨウは容赦なく俺の偽りを取っ払ってくる。


今は俺しかいねぇと肩を竦め、本音を聞かせろと真っ直ぐ見据えてきた。


言えるわけがない。


“お前”だからこそ、言えるわけがないんだ。