俺は深い溜息をついた。

大喧嘩した後ってどう接していいか分からないよな。


謝ればいいって簡単に口では言えるけど、実際行動に起こすとなると上手くいかないもんだ。変な意地とかプライドとかが邪魔するし。


なんか利二のことを考えると今日一日の授業がめっちゃダルい。

ついでに身体もダルイ。

朝のSHRからダルイって思ったくらいだ。授業なんてもっとダルイ。

一時限目の数学は辛うじて出たけど、二時限目の現社まーじダルイ。寝とけばいいんだろうけど、なんか教室、窮屈なんだよな。現社の後は体育だしさ。


ダルさは頂点に達して、嫌気が差してきた。

表面真面目で通してきた俺だけど、今回は真面目ちゃん無理そう。


マジダルイ。


時計に目をやる。もう二分くらいでチャイムが鳴るな。

俺はギスギス軋む身体に鞭打って席を立った。


「圭太くん、何処行くの? もうチャイム鳴るよ」


透が不思議そうな顔で俺に視線を向けてくる。

俺は曖昧に笑って肩を竦めると、教室を出た。チャイムがそろそろ鳴るってことだけあって、生徒達がそれぞれの教室に戻って行っている。


いつもの俺なら空気を読んで教室に戻るけど、今日の俺、不真面目ちゃんだから! あくまで気持ちだけだけど!


横一列に並ぶ教室たちの前を素通りして、さっさと階段に向かっていると名前を呼ばれた。


振り返れば、教室にいたヨウが窓から身を乗り出して俺の方を見てくる。ヨウの奴、今日は真面目に朝から学校に来ていたんだな。って、思った瞬間、チャイムが鳴った。


やっべぇ、早くココからトンズラしねぇと先生来ちまう! 真面目ちゃん通してきた俺にとって、実はサボるって行為はドッキドキバクバクだ。

現に今、スッゲェ心臓鳴っている。

そんな俺を余所にヨウが声を掛けてくる。


「ケイ、昼飯一緒食おうぜ」

「いいよ。いつもの場所だろ? ってか、俺、早く行かないとヤバイんだけど。先生に見つかったらマジヤバイ」


「相変わらずクソ真面目だな。ケイ」


悪かったな! クッソ真面目ちゃん貫き通して16年目だよ! あくまで表面のクッソ真面目ちゃんだけどな!

けど、今日の俺はクッソ真面目ちゃんじゃねえぜ? なんたって俺、内心ビビりながらも、超ビビりながらも(でもチキンじゃないよ?)


「俺、今からふけるんだって。だから見つかったらヤバイ」

「マジ? ふけるのか?」


何だよ……そのスッゲェ意外そうな顔。

どーせ俺は真面目ちゃんですよーだ。


お前と違って地味な真面目ちゃんですよーだ。悪いかバッカヤロ!


心の中で悪態ついている俺、口に出せないことがこの上なく情けないけど仕方がない。
ヨウは不良だもんな!

そう簡単にツッコミなんて入れられねぇって!

仲良くしていたじゃないかって言われても不良は恐い! 胸張って言える!


そんなことしている場合じゃない。

俺はヨウにもう行くと告げて、速足で廊下を歩く。

走りたいのは山々だけど身体が痛いんだよなぁ。