僕は百合の背中に《ゆり》と書いた。
『くすぐったい!! えっと…ゆ…り…』
『分かった?』
『優君が好きな人って私…?』
『うん』
僕は迷う事なく縦に首を振った。
『百合は…どう思う?』
『あたしの好きな人当ててみて』
『えっ?うん』
『背中向けて?』
百合の指が僕の背中をなぞる。
百合が書いた文字…
それは《ゆう》だった。
『…百合も俺を好き?』
『うん、好き』
『ホントに?』
『うん、ホントに』
『ホントにホント?』
『だからホントだよ。優君が好き』
僕は嬉しさのあまり声が出なかった。
ただ立つだけで精一杯だったんだ。
百合と両思い。
世界が輝いてみえた。
夜空に浮かぶ星が僕達を祝福してくれているかのように、輝いていた。
『じゃあこれから百合は俺の彼女だから。絶対に幸せにする』
『うん、じゃあこれから優君は私の彼氏ね。よろしくね』
『うん…何か照れるな』
僕と百合の距離は一気に縮まった。
僕は百合を必ず幸せにします。
僕は…必ず…百合を…
僕達は手を繋いで学校を後にした。
初めて繋ぐ百合の手は、とても小さくて綺麗な指だった。
僕は緊張して手汗が出ていたと思う。
百合は気付いてたかな…
駅まで百合を送っていった。
その間いろんな事を話した。
百合の誕生日は8月27日。
O型、
一人っ子、
とかいろいろ。
少しだけ百合を知ることができた。
これからいっぱい知っていけるといいな。
僕はそんな期待と楽しみで胸がいっぱいだったんだ。


