この涙が枯れるまで



時間が過ぎていく。
僕は今日は泣かないと決めたんだ。



笑って…さよならをしようとしていた。



そして火葬場に運ばれていく。
百合の遺体はここにはない。
でも火葬場に棺桶は運ばれていった。



僕は外に出て、百合が運ばれていくのを見送った。



『なぁ…歩?』



『…ん?』


『俺…百合に出会えて良かったよ…後悔なんてしてない』



『うん…』



『百合は俺といて幸せだったかな…』


僕は幸と同じ質問をした。


『…幸せに決まってんじゃん』



歩も幸と同じ答え。



『俺…それだけでいいわ』


『優…これ…』


歩が差し出したのは、一つの袋。


『これ…』



『空港に置き忘れしてあったからさ、中みたら、カード入ってて。優のだったからさ』



『…さんきゅ…』



『いいって…』



『歩…やっぱ俺には時間が必要かも…な』



立ち並ぶ木々が気持ちよさそうにユラユラと揺れている。



『時間?』


『今すぐ百合を忘れろって言われても無理なんだ…百合を忘れられない…』



『そりゃそうだろうな…』


『歩には分かるか?』



『え?』



『愛する人を亡くした辛さ』



『…………』



みんなに、分かるかな…愛する人を亡くした、僕の気持ち・・・