「…いきなさい。」

智晴の近くにくると、お父さんがそっと呟いた。



「…お父さん…。」

名残惜しくて、お父さんの顔を見つめる。



そっと、お父さんのごつごつした手から、タキシードを着た智晴の手に変わる。


いつもは感情をあまり外に出さないお父さんが、智晴を見て優しく微笑んだ。




智晴はしっかりと頷くと、私に笑いかけた。


すでに滲む視界だけど、私もしっかりと頷き返した。