「…それでも、舞花は俺にとって大事な存在だったよ。」


「智晴…。ありがとう…」



舞花は目を真っ赤にしながら俺に笑いかけた。





…あいつ、俺の前では泣かなかったな。
俺がフッた日。
じっと堪えて、走り去っていったんだ。
あの時の小さな背中が、今も記憶に残ってる。





「智晴…?」

舞花に名前を呼ばれて、ハッと我に返る。



「え…あ、なに?」

あわてて答えると、舞花は穏やかに笑った。




「…智晴。今は、大切な人ができたのね。」

「…え。」


驚いて舞花を見ると、舞花はふふっと笑った。




「気付いてないの?今、顔が緩んでたわ。智晴って、昔から感情がぜんっぜん読めなかったけど、今のは一発で分かったわ。」


そう言って、舞花は得意気に笑った。