ホームにいくと…
見たくない光景が目に飛び込んできた。
舞花がいる。
そこに、智晴先輩がいる。
智晴先輩は…
舞花を抱き締めている。
そっと、コワレモノを扱うように、とても大事なモノを包むように。
舞花は…
先輩の腕の中で肩を震わせて、泣いていた。
「舞花…」
ここは駅のホームで。
電車の騒音や、人の行き交う雑音でごったがえしていて。
しかも、智晴先輩と舞花がいるのは、ホームの端で。
なのに、やけに鮮明に、智晴先輩の声が聞こえる。
「舞花…泣くなよ…。」
「あたし…どうして…どうして、智晴を好きにならなかったんだろう…」
先輩の苦しそうな顔。
まるでドラマのような、舞花の哀しそうな泣き顔。
二人の間に流れる、ひどく切なくて綺麗な空気。
すべてに耐えられなくなる。
すべてに侵食される。
私の気持ちは…
どこに行けばいいの──…?

