「ちょっとだけなら」

「そっか。やっぱり気になるんだな。明日香、崎本のお気に入りだし」

「お気に入りって……、そんなんじゃな……」


“そんなんじゃなくて、イジメ要員だよ”

そう言おうと思ったけど、なんとなく言えなかった。


それは、自分の気持ちに気付いたからなのか……。

いつも、なにかにつけて助けてくれるミツを、そんな風に言うのに遠慮したからなのか。


それとも、ミツから見た自分が、ただの“イジメ要員”じゃイヤだって思ったから?

ただの“幼なじみ”じゃイヤだって思ったから?


自分の気持ちを探れば探るほど、ミツへの想いに気付かされて顔が熱くなる。


今までかなりキツめの曇りガラスでコーティングされてた部分。

その仕切りが、誰かの手によって急に抜き取られちゃったみたいに、自分の気持ちが明確に見えた。

……誰かって誰だろ。



「崎本って、俺様って感じしない?」


急にそんな事を言い出すから、不思議に思いながら聞いていると、孝太が空を見上げながら言う。


秋晴れの空は、今までで一番空気が澄んでるんじゃないかってくらいに高かった。