「『頼むから……、早く俺の女になってくれよ……』って、違う。

『オレも無理。言ったよな? もう離さないって』これも違う。

もっと間接的な感じで……って」


って、恋愛小説の中なんかに出てきたシーンとかぶってるハズないじゃん。

っていうか、かぶってたらなんか、ミツがあたしを好きみたいじゃん。

で、あたしが鈍感な主人公、みたいな―――……、


「おまえ、またかよ」

「!!」


急に後ろから声が聞こえて、肩をすくませる。

バっと振り向くと、呆れた顔をしたミツがあたしを見ていた。


「ミ……、帰ったんじゃ……」

「帰ってカバンだけ置いてきた。

今日はこっちでメシ食うって言ったろ。もう忘れてんの?

そんなくだらねーモンばっか読んでるから、頭がどんどん悪くなるんじゃねーの?」

「くだらなくないってば!」