「そうだよね、まだ告白もしてないっぽいし」

「誰に?」

「田口の妹さん」

「それ、本当に充くんが言ったの?」

「うん。『田口の妹、可愛いから』って。

あたし、ミツの口から『可愛い』って単語が出るの初めて聞いたし、本気だと思うけど……。

何か引っかかる?」


ひかりは、難しそうな顔をした後、「別に」とだけ呟いて、そこでチャイムが鳴った。




5時間目と6時間目の授業中、なんとなくミツの後ろ姿を見ていた。


子供の頃はあたしと同じくらいだったのに、いつの間にかあんなに高くなった背。

大きくなった背中。


今までは、口げんかじゃ収まらなくてプロレスみたいになったりもしてたのに、特に気にならなかった。


それは、“ミツ”と“恋愛”って言葉が上手くリンクしてなかったから。

あたしにとってのミツは、あくまでも幼なじみであって、男じゃなかった。

兄弟に近かった。