その言葉に、私は顔を上げると視界にサエの姿が入った。

サエは紀子と同じように私を睨むように見ている。


『負けるな』


頭の中で声がした。




立ち上がって男子部の方を見ると、試合中の桐沢君と目が合った。

彼は口パクで何かを言うと、あの時と同じように微笑んだ。




『がんばれ』




私に頑張る力、この時はまだあった。