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1868年1月10日、大坂の港に着いた二隻の軍艦に乗り込んで、私達は大坂を離れた。
甲板に立ち、海の向こうの大坂を振り返った。
あの先に京があって、
………始まりは突然で、
思いだすと胸が焦がれた。
白刃煌めく世界で、動乱の世を彼らと共に過ごして、
何度も助けてもらった。あの刀に。
ありがとう。新選組の皆さんに逢わせてくれて、沖田さんに逢わせてくれて。
ガバッ
「きゃっ」
胸に手を合わせていると、後ろから急に抱きしめられた。
沖田さん……?
違う、
「……山崎さんならこうすると思ってな」
「さ、斎藤さん!!」
首を捻って後ろを見れば、そこにいたのは斎藤さん。
お、お久しぶりです。
肩をギュッと抱かれてから、斎藤さんは自然に離れていった。
な、なんだったんだろう。
こんなことにドキドキしてしまう耐性のないチキンハートが嫌になる。
かわらない無表情で、斎藤さんは私をじっと見つめた。
「驚かせてしまったならすまなかったな」
「いえ、そんな、少し驚きましたけど」
「京を見ていたのか」
「……はい、お礼を言っていたんです」
斎藤さんが京の方を向いたから私ももう一度そちらに視線を向けた。
「…礼?」
「はい、皆さんに出逢わせてくれてありがとう、と」
「……それはどうせ沖田さんばかりなんだろう」
「え?」
「いや。なんでもない。」
無表情を少ししかめたかと思ったら、こちらを見て少し微笑んで、今日の斎藤さんはなんだかおかしい。

