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戻って来てからは一つ一つが、一瞬一瞬が、なにもかも大切だった。
堪能すればはかなくて、愛しくて
戻って来た春は皆でお花見をして、
梅雨はてるてる坊主を作って沖田さんとお昼寝をして、
夏は暑いから風通しのいいところで涼むの、
それから秋は庭の紅葉が朱く染まっていく様子をゆっくり見て
……毎日幸せで、
大切で、
6月に新しい屯所に越して、やっと慣れて、このままずっとこの日々が続くと思ってた。
知らなかったのは私だけだったのかな、
ただ毎日が平凡に過ぎてるって思い込んでいたのは、
私だけだったのかな。
1867年11月
気付かないところで、歴史の幕は閉じようと進んでいた。
「沖田さん……?」
夕飯を持って沖田さんの部屋に入ると、沖田さんは座って刀の刃を睨むように、悲しむように見ていた。
その姿があまりに綺麗で私は襖を開けたまま立ちすくんでしまって、それからハッとした。
「こ、こんな時間に刀なんか見てどうしたんですか」
「……ちょっとね」
刀から私へむけられた視線は優しかった。

