でもキタジ君の不安そうな様子はとれなくて、首を振って反対した。
「…街の様子見た、よね…?」
「…え?」
見たような、見てないような。
どちらかと言えば見た、気がする。
でもただ目にうつしただけだからそこに思考とか感情とかなくて大事なものが抜けていた。
「街の人は、少しずつ戦を恐れて京から離れていってる。
戦だよ……?絶対長州側にいたほうがいい」
ああ、そういえば皆あまりいい表情は浮かべてなかったし、大荷物を運んでいた人もいた。
そういうことだったんだ。
これから起こる、戊辰戦争に向けて。
さすがにここからは表舞台。
いくら私でも流れは知っていた。
「それを承知で帰って来たの、キタジ君、私、覚悟はあるよ」
だからお願い、笑って見送ってよ。
苦渋な表情を浮かべるキタジ君は、私を見てから、肩を落とした。
「すごいね、きっとその決断は僕には出来ない………」
言ってからやっとキタジ君はニコッと笑ってくれた。
「今度会う時は敵かもね」
ふるふると顔を振るキタジ君。
本当、優しいな皆。

