「桂さん、ありがとう」
私がそう言うと、桂さんはニコッと笑ってくれた。
「お幸せに、…キタジ、菅野君を新撰組の屯所まで送ってくれるかい?」
桂さんの視線が私から離れてキタジ君に向かう、
キタジ君は無言のまま頷いた。
桂さんにこんなに感謝するとは思わなかった。
桂さんって深い。
ありがとう、桂さん。
***
「私キタジ君や幾松さんが桂さんについていく理由がわかったよ」
キタジ君と並んで歩きながら私はボソリと呟いた。
長屋の並ぶ道、歩く人々の様子をただ見るだけ。
キタジ君は一年経ったらしいけれど、肝心なところは成長してない、
全然喋る気はないらしい。
だけどしっかり目を見てくれてる。
「桂さんって憎めないもんね。それにやっぱり最後は心配してくれたし。あ、私ここでいいよ。帰り方わかるし」
後は角を曲がるだけ、という場所で私はピタッと立ち止まった。
だってキタジ君は長州の人でしょう?
新撰組に近付くのは危険なはず
止まった私にキタジ君は一歩進んで振り返った。
その表情は少し寂しげ。

