それだけ、桃が残していったものが大きかったんだろう。

そこは感謝すべきところだが、

誰の胸にも切なく残った

なんでさよならも言わずに帰ってしまったんだと。



沖田の側にいてやって欲しかった。

沖田も口には出さないが思っているだろう
一番今求めているだろう。

死病、労咳にかかった今。






***


「めちゃくちゃ驚いてるね、うん。そうなると思ってた」



もはな運命?みたいな。

驚いて矢を落としたキタジ君に私は笑いかけた。


ここは長州藩邸の中にある弓道場。


来たことはないけれど前に久坂さんにここに弓道場があるって外装だけ見せられた。


相変わらず話さないキタジ君。



桂さんはいない?

キョロキョロと見渡してラッキー、なんて思ってたらキタジ君が私の後ろを指差した。



「そこの洋装のお嬢さんは菅野君だね!久しぶり!一年ぶりだね、またどうして戻ってきたんだい?」


ひいいいいぃ!!!



桂さんがバンッと私の肩を叩いて隣から私の顔をじっくり見た。