「うちと遊ぶ?キタジはん」 「ははは、やめておけ涼香、キタジをいじめてやるな」 涼香の男声にキタジがバッと顔を上げて、幾松はますます頬を緩める。 喜多時、彼も桃と同じく、『よろしくされた仲』なのだ。 桂のお気に入り、 賑やかな周りも気にせずに彼らは彼らの時を過ごしていた。 「ああ、そうだ、君に贈るって覚えているか?」 桂はお酒を飲んでから幾松を見、それからその、君に贈るを懐から取り出す。 幾松にこの本のことを話したのも、あれは春の前だったから前の話し。 それでも幾松は頷いた。