私は騒がしい屯所内の中、山南さんの部屋で立ちすくんでいた。
山南さん……?
後ろでは土方さんと近藤さんが話していた。
「まだ脱走と決まったわけではなかろう」
「局長、置き手紙が」
平隊士の一人が信じられないといった様子の近藤さんに文を渡す。
私もそれに注意をはらうように二人を振り返った。
山南さんが脱走………?
どうして………?
いったいあの優しい笑顔に何があったの?
脱走って………局中法度で切腹だよね……?
山南さんが……?
近藤さんは読み終えた手紙をくしゃりと握りながら俯いた。
「指示を……近藤さん」