「わかりました……」 なんとなく、なんとなくだけど久坂さんの名前を私が呼んだら久坂さんは出てきてくれるんじゃないかな、とか淡い期待を抱いていた。 なんやかんやで久坂さんはいつも現れてきたからね 強張る体を必死に正気に戻して一言 「久坂さんっ」 静まるその場にはよく私の声が響いた。 でも何もない。 「久坂さんっ、桃です!お話しがしたいんです!いらっしゃりませんか……?」 もうやけくそだった。 出て来てくれると思ったのに、 肩を落としたその時、キィと前方の扉が軋む音がした。