ラスト・ゲーム




俺の肩を越えて響いた、親父の声。



「母さんはバスケ部のマネージャーでさ」


歩み寄ってきた親父はボールを俺から奪い、指の上でくるくると回す。

地球儀のように円周を描き続ける、茶色い球体。


「どんなに忙しくても、きつい仕事を任されても、人に頼らない。手伝うって言っても自分の仕事だからって言うんだ。」



─媚びない、ところ。


…俺の麻子への気持ちの1つと同じ理由、だった。



「なぁ、元也」

「ん?」


「…ずっと前に、お前に『守りたいものを、守れる男になれ』って言ったの、覚えてるか?」



ゆっくりと頷く。


親父は続けた。




「俺の今の守りたいものは、母さんと……お前だよ」



親父はそう言い終えると、くしゃり…顔を歪めて、笑った。



「お前も、守りたいものがある男になれよ」




『守りたいもの』を、はっきりと言い切った親父。


ゴールに向かい、シュートを再開する彼の広く…大きな背中。



凄く、凄く…眩しかった。