ラスト・ゲーム



親父も、よくもあんなキザなことがやれると思う。

それでも嬉しそうに、まるで子供みたいにはしゃぐ母さんを見ていたら、なんだか俺まで嬉しくなってしまった。



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ダムダムダムダム…


いつもの庭でボールをつきながら、隣の親父にふと視線を投げかける。

それに気付いた親父は、いつもの優しい笑みを浮かべてドリブルしていた手を止めた。


親父の手の内に、吸い付くように戻るボール。



「…親父は、母さんのどこを好きになったの?」


ポツリと呟くような問いかけ。


「可愛いところじゃないか?」




─パシュッ!


親父がまた寝ぼけたことをいい始めたので、とりあえず、無視。
ボールをゴールに向かって放った。


ゴールに向かうボールが描く弧は、ゆったりと世界を二つに分ける。


俺はただ、それを純粋に綺麗だと思うんだ。





「媚びない、所かな」