「おっ!今日はすごいご馳走だなぁ」
親父は相変わらずの似合わないスーツ姿で、母さんのはりきりすぎだろうと思われる量の食事が並べてあるテーブルについた。
「今日は、何かあるのか?」
ゆったりと、悪気は全くないような顔で俺と同じ台詞を述べる親父。
「もぅ~あなたったら忘れたふりして」
母さんが笑って答える。
「…誰かの、誕生日か?」
…母さんの顔が、ちょっと曇った。
「あ、食材、買いすぎたのか?」
……母さんの顔は、完全にひきつった。
「買いすぎはだめだぞ、節約、節約」
………もう俺は、母さんの方を見れなかった。
「うそだよ」
机の下から現れた花束。
母さんの顔に、まぶしいほどの笑顔が溢れる。
それからというもの、親父と母さんは二人で微笑みながら昔の話を
…″永遠″に、語った。
被害者は…
息子の俺、だった。



