□□
「何かあったの?」
家のテーブルの上に並ぶ色とりどりの料理に、目をチカチカさせて、俺は言った。
「さぁ~元ちゃん、なんだと思う?」
母さんは嬉しそうに顔を輝かせて、答える。
(親父の誕生日?…ちがうよなぁ…母さんのは先週だったし…)
真剣に悩む俺に、母さんはなおも嬉しそうに答えた。
「お父さんと、お母さんの、結婚記念日よ!」
…知らねぇよ、そんなの。
「あれはまだお母さんが高校二年生だった時…」
…母さんの話は、永遠に続くのではないかと思われた。
しかし次の瞬間、
″ピンポーン″
親父の帰宅を知らせるチャイムの音。
おかげで俺は、母の本人いわく「甘酸っぱーい思い出」話から解放された。
…親父とおふくろは、高校からの付き合いで見事ゴールイン、らしい。
二人とももう結婚してずいぶんになるが、とても…いや、異常に…仲がよかった。



