─ガタッ。



机がずれてたてた不格好な音に、思わず顔を上げる。



目に写るのは、いつもの見慣れた教室の風景だ。



時計の針は、授業が始まって20分も経っていないことを俺に告げていた。




(……夢、か─)



ホッと強ばっていた肩の力を抜いて、寝汗で少し湿ったノートに急いで前の黒板に書かれた文字を写し始めた。

寝汗、というものはどうも後味が悪い。
部活でかいた汗ならスッキリといった感覚の方が大きいのに、これは熱を持ったように体内で膨張して、なかなかひかない気だるさを催す。


気休めにはなるだろうと、制服のシャツ襟を引っ張りあげて、下敷きで生ぬるい風を送り込んだ。



(あっつ……)



太陽光線が、外の大気をユラユラと歪ませていた。