□□
ほんのり光が漂う、バスケットゴールの下。
ここが俺の始まりで、自分をさらけ出せる、唯一の舞台だって、俺はもう知っている。
少し錆びて色褪せたこのゴールは、その光を浴びて鈍色に輝く。
─それはまるで、俺と親父の歴史を物語っているかのように。
小さく背中を丸め、特に乱れてもいない靴ひもを、きつく結び直した。
「元也、やるか」
『勝負』の始まりを告げるのは、いつも親父の太い声だ。
立ち上がって顔を上げると、月明かりの逆光の中…黒く浮かび上がる大きく広い背中。
この時だけは、俺は無心になれる気がする。
向かうのは一点。
目指すのは一つ。
研ぎ澄まされた俺の全神経を、指先からボールに注ぎ込んで。
俺は、
一歩を踏み出した。