背中に痛いほどの視線を感じて、ゆっくり…ゆっくり振り返る。 田原は、階段の一番下に立ったまま、しっかりこちらを見据えていた。 教室と廊下。互いの視線がぶつかった刹那。 …あの時と同じ、強い目をして。 「…麻子のこと、好きなのか?」 田原は、はっきりと、そう言った。 彼の目は目は、俺の姿を捕らえたまま…決して反らすことはしなかった。 階段の下と上。 静まり返るこの空間に、強い目をした田原と、それに向き合う俺を残したまま… 空気が、止まった。