昼休みの残りは、まだゆうに10分以上ある。

しかし麻子の教室に向かう足は、次第に早くなっていった。


なんだか最近…麻子を目で追っているせいかな、彼女をすぐに見つける能力がついたみたいだ。



教室につくと、その例に漏れず…俺はやっぱりすぐに麻子の姿を見つけた。


窓から見える彼女の笑顔に、思わずふと、笑みが溢れる。



「あさ──、」



名前を呼ぼうとして、思わずそれを飲み込んだ。

満面の笑みを浮かべる彼女の隣にいる人物。




(…田原)



田原真人とは、二年の時一緒のクラスだった。

別に嫌いとかじゃないんだけど、何て言うか…田原は何でもできるヤツで。
かっこよくて、頭もよく、スポーツも軽くこなす。その上優しくて先生受けもいい。

俺は嫉妬していたわけではないと思うが、何故かコイツとはウマがあわなかった。


…嫌いじゃ、ないけど。





しかし今、麻子と楽しそうに話す田原に、俺は、紛れもなく嫌悪感を抱いていた。