教室へ向かって必死で猛ダッシュするアホ二人組。

今タイムを計ったら、最高記録が出るかもしれない。…そんなどうでもいいことを考えながら、翔太の背中を追った。





『お前は、麻子ちゃんが好きなんだろ?』




浮かぶのは、翔太のいつになく真剣な瞳。



─麻子への気持ち。



中身のない頭でも、少し捻りあげれば見えてくるのは単純な感情で。



真摯な眼差しから隠し通せるような技は持ち合わせていなかった。

…誤魔化せない。




ごまかしたくは、ないと思った。




□□



教室に入った瞬間にチャイムが鳴った。



…ぎりぎり、セーフ。


宿題はしてないけど。






窓際の席の、4番目に翔太、後ろの5番目に俺が座る。

必死の走りのおかげで、息絶え絶えの俺たちの呼吸がまだおさまらないまま、すぐに授業が始まった。







今。

言わなければと、思った。