手の中で、少しぬるくなった紙パックを転がす。


「ふ~ん、麻子は俺と間接チューするのが嫌なわけだ」


…冗談で、言ってみた。



麻子は驚いたような顔をして、一瞬黙る。


見開かれたその目に、なんだか俺の方が恥ずかしくなってきた。





「…冗談だよ」
「やっぱ飲む」






…麻子と俺の声がかぶった。



自分の顔が熱くなるのがわかる。


麻子に顔を向けないようにしたまま、ずい、とジュースを麻子の方に押しやった。


麻子はそれを今度はちゃんと受けとって、そっと唇へと運んだ。



「…まず」



そう言って、照れ笑いを浮かべる麻子。


…多分俺も、きっと照れ笑いをしていたけど。




少しだけ暗闇の影をのぞかせる、夕方の空。

そんな遠くの空に光って見えるのは、一番星だろうか。



隣との距離は、とても近くて…でも微妙な隙間は保たれていて。



麻子と帰る道は、やっぱりなんか…


なんか、くすぐったいんだ。