─俺の、体育館。



─俺たちの、体育館。





……俺の、全て。





□□




体育館から響いてくるドリブルの音が、俺の体に、心に…心地よいほどに響き渡る。


心臓が、やっと正確なリズムを打ち出した気がした。


一段一段、階段を踏みしめ、体育館の入り口のドアがの存在を確かめる。



…そして、



そのドアの前には…小さくうずくまった麻子が待っていた。



「……元っ!」


俺の存在を見つけた麻子の顔が、満面の笑顔でほころびる。



…俺の、好きな笑顔。




俺の、守りたかった笑顔だ。



「……もう、来てくれないんだと思ってた…っ…」


笑顔なのか、泣き顔なのか…麻子はくしゃっと顔を歪ませる。



「…ごめんな。」




…でも俺、もう逃げないよ。



『守りたいもの』が、有る限り。




ぶつかった視線は、互いの笑顔で優しく混じりあう。




─…ピーッ!!



渇いた空気を、切り裂くホイッスルの音。


麻子が首にかけていた笛を思いっきり、吹いた。