…プルルルル……プツッ


「……はい」



「…早水か―…?」


電話の相手は、全く予想もしなかった…カバだった。

「……せ…んせい…?」


俺はまだ状況を理解できずに腑抜けた声を出した。


「…元気に…してたか?部員全員、心配してたぞ」


カバは低い声で、そう言った。


「…………。」



言葉が、見つからない。


「…早水、一つお前に聞かなきゃならないことが…あるんだ」

カバの低い声が、調子を強めた―。


「明日の朝、学校に来て欲しい」



……学校に?








「…い……けま…せん」




―今の俺を、みんなに見られたくないんだ。


……俺はすっかり闇にそまってる。日の当たる場所になんて、出れない気がしていた。



「大事な、話なんだ」


カバは、一歩もひかなかった。強い、意思をもった声だった。



「…行けないよ、先生…」




…行けないんだ。

……俺には、もうそんな勇気も何も…残っていないんだ。



……そう、何も―。