…コンビニで、何か買ってくるか。


ふぅ、と小さくため息をおとして踵を返す。



静かな寝息をたてる母さんを無理やり起こしたくはなかった。



音をたてないように階段を上がると、急いで二階の自分の部屋から、薄っぺらい財布を取り出してジーンズのポケットに突っ込む。


そして、母さんが起きないように、そぅっ…と玄関のドアを閉めた。






─外に広がる景色は痛いほど、眩しかった。


まるで目薬でもさされたように、目の奥がジンとしみる感覚。





″……待て、よ″



歩き出した俺の脳裏に浮かんだ、一つの疑問。


あまりに薄い自分の財布に不安になり、中を確かめる。




…かろうじて夏目漱石が一人、いらっしゃるようだ。


ホッと胸を撫で下ろした俺は、久々の外の空気に少しの違和感を感じながら、コンビニへと…向かった。