親父はそんな俺に気付いているのかいないのか、明るいいつもの声で、話を続ける。
…でもきっと、親父だから俺のことは全てわかっていて。
だから、余計に、惨めだった。
「…元也」
低く安定した、親父の声。
相変わらず何も答えない俺に、親父はゆっくり振り向いて、そして言った。
「1on1…やらねぇか?」
背中の筋肉が、ピクリと反応する。
…初めてだった。
親父から、俺を誘うのは。
今までではずっと、俺がねだっていたから。
『1on1、やらねえか?』
─嬉しかった。
純粋に、嬉しいはずだった。
しかし、今の俺には、もう何の余裕もなかった。
ちっぽけな俺の中には泥々した感情しか残っていなくて、それが喉元まで詰まって…言いたい言葉を絞め殺した。
「…やらない」
コップを握り締めたまま、そう言った。



