この日は客足も少なく、マスターから「早めに終わっていいよ」と言われ、ちょうど家へ向かって歩いていた時。


首元を覆っていたマフラーに顔を半分埋めて、家へ急いだ。



マンションの部屋に明かりが灯っているのを見て、すでに拓海が部屋に居る事が分かる。


エレベータに乗り込み、マフラーを解いた。



「ただいま」


「おかえり、って早くね?」


「今日は早く終わらせてもらったの」



玄関先でブーツを脱ぎながら交わす会話。


拓海はオフホワイトのセーターとジーンズで完全にリラックスしているようで。


この頃はスーツ姿を見てないなぁなんて考えていた。