拓海が好き。


自分の一途な気持ちに毎回苦笑する。



「嬉しそうだね?」



真央の問いかけに意識が浮上した。



「私も奈央みたいな恋をしたかったな」


「ん?」


「ごちそうさま」



気が付くとアプリコットクーラーはすでに飲み干されていて、カタンと席を立った真央を静かに見守る。


穏やかに微笑む真央はいつもの真央で。


コースターの横にはいつもの金額が置かれている。



「奈央、またね」



ヒラヒラと手を振ると、マスターに会釈してお店を出て行った。



何かあったんだろうか?


もしかして……



真央は修ちゃんサンとの結婚に迷っているのだろうか?



ふとそんな些細な疑問が頭を通り過ぎた。