場所を移動する間、誰も口を開かなかった。


少し前を歩く社長と拓海の背中を見ながら、さっきの拓海の顔が何度も何度も頭を過る。



ホッとしてるの?


これですべてが終わるって……



連れてこられたのは絶対にうちの社員とは遭遇しないだろう高級料亭。


社長が名前を告げると、女将さんらしき着物を着た女性が奥から出てきて、靴を脱ぐと長い廊下へと案内される。


社長も拓海も特に戸惑った様子もなく後ろを付いて歩く。


一番最後に歩く私は渡り廊下から見える中庭の景色に目を奪われていた。