そう思いつくも、この綺麗な肌に傷をつけてしまうのはやっぱり惜しい。 私にはできない。 悔しさに睨みつけたお兄ちゃんの瞳に映る私の姿は――― 灰色の、しっぽと耳の先っぽが白い猫。 「可愛い」 こんな姿をしているときに言われても嬉しくない! 私はキスしようと近づいてきたお兄ちゃんの唇にぽんと肉球を置いて、ストップをかけた。 そしてはぁ、とため息をつく。 猫だけど。 そもそもこんなことになったきかけは――― 昨日の夜に遡る。