言葉を失っていると、選手入場ー、の合図がかかった。
係の人の誘導で、それぞれの位置についた。
きょろきょろとまわりを見て、どっかで見てるはずのお兄ちゃんの姿を探していると、佐伯先輩と目があってしまった。
佐伯先輩はわたしのほうを見て、にっこり笑った。
「負けないからね」
「……はい」
ごくりと喉を鳴らした。
じわじわと闘争心が湧き上がってきて、気を引き締める。
絶対に、この人には負けたくない。
そう思いながらスタートの準備をする。
わたしの熱い視線に引きつった顔を浮かべながら、スターターがピストルを持った手を上に挙げた。
『位置について』
きゅっと唇をかみしめる。
『よーい』
パァン、とピストルが鳴って、瞬時に足を動かした。



