皆興奮しているせいか、お兄ちゃんが若干お家モードに戻っていることに気づいていない。
言い合っているうちに、スターターがピストルの口を天に向けた。
その瞬間、お兄ちゃんの表情が一気に真剣なものになる。
まわりの女子生徒がほぅ、と息を漏らした。
わたしもメガホンを手に、ごくりと息を飲む。
前から思ってたけど、お兄ちゃんの真剣な表情は、どことなくセクシーだ。
やっぱ、かっこいい……
パァン、とピストルが鳴って、お兄ちゃんを含めた八人の選手が一斉にスタートを切る。
お兄ちゃんは足が速い。
ぐんぐん他の人たちと差をつけて、あっという間に一位に躍り出た。
だけど二位についてる二井くんも負けてなくて、お兄ちゃんとの差はあまりない。
少しずつ少しずつ、その差が縮まっていく。
「が、がんばれ……」
カーブに差し掛かって、とうとう差がなくなった。
握りしめた手の内で、汗がじわりと滲んでくる。
そのあとの直線を二人並んで走っている。
二人とも同じブロックだから、どっちが先にゴールしても、ブロックに入る得点は同じ。
もうすぐ、ゴールだ……



