「……なぁ信治」 「ん?」 「……なんでアイツは、あんなことしたと思う?」 「え?」 「……笹川はなんで、カッターなんか持って死のうとしたと思う?」 「さぁ……俺にはわかんねぇ」 「アイツはきっと、悲しかったんだと思う。……母親から愛されたことは一度もないって言われたから」 「……え?」 「笹川の母親は、アイツを娘だと思ったことは一度もないんだと」 「……そうか」 「アイツはきっと、それが悲しかったんだと思う。……だから死のうとしたんだと思う」 「……あの子、そんなに苦しかったのか」