『木岐郁未にとってお前は唯一、普通に接してくれる奴なんだろ』


洸稀がそう言っていた。

俺は受け止めるべき人間だとも言っていた。


ただ素っ気なく話しているだけでこれだけ喜ばれる。


――もし付き合ったら……?――


「龍河くん?」


その声にハッと気付く。

俺は今、なにを――?


「だからね、お兄ちゃんは怖くないよ?優しいし、誰彼構わず殴るわけじゃないし、親友だって……暁くんだっている」

「あ?……あぁ」

「お兄ちゃんを、嫌わないで……?」


――その日、初めて木岐郁未の心から思う言葉を聞いた気がした――。


「……いくみ」

「――え?」


『お前は、あの子を受け止めてやるべき人間なんだよ』


決心がついた。